読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ある「住居侵入事件」(無罪事件) 第1回


今日から、何回かに分けて、ある「住居侵入事件」について書いておきたいと思います。


ある夏の夜中、東京都目黒区内の、あるアパートでの出来事でした。
そのアパートの二階に住む女性が「お風呂場を覗かれた」という内容の110番通報をしました。
その通報を受け所轄の警察署から二人の警察官がパトカーでやって来ました。その二人の警察官は「被害」女性から事情を聴き、住居侵入に当たると判断してアパートの周りでその「犯人」(被疑者)を探しました。(当然責任ある立場の警察官には無線で連絡をしてあります。)


確か110番通報を受けパトカー到着から20分くらいたってだと思いますが、その二人の警察官は周辺をパトカーで警邏中にある男を発見しました。そして職務質問をして暫く話したようですが、ここで立ち話をしているのは良くないからと言われ、約1時間後、その男は所轄に一緒に行こうと言われ、その所轄の警察署に行き「任意」の取り調べを受けました。

 

職務質問を受け警察に連行された男は、「自分はそのアパートに行っていない」とずっと言って「犯行」を否定していたのですが、警察は被害女性をパトカーで迎えに行き、警察の別室から「被疑者」の男の面通しをしました。その女性は少し考えていたようでしたが、「お巡りさんからその男が自分がアパートに入って覗いた」と言っていると聞かされ、「じゃあ、その人が犯人です」と答え供述調書を作成されたのでした。

 

その「犯人」の男は実は、そのアパートと目と鼻の先にあるタクシー会社の従業員でした。確か従業員数が50人~70人くらいのそんなに大きくないタクシー会社だったと思います。否認し続けたら明日から働けなくなる、食えなくなるという恐怖がその男にはありました。当時35歳を過ぎ福島から出てきた人でしたから、タクシー会社を辞め他の職を探すのも容易でないし、明日から生活に困ると考えました。警察官からは、自分が犯人だと認めればすぐ返してやると言われ穏便に済むならそれでもイイやと思って「自白」して供述調書を作成され、解放されました。その後管轄の簡易裁判所で略式起訴され罰金を払ってしまいました。

 

ところが、罰金を払ってしまった彼は、数日後、そのタクシー会社の組合の委員長に実はこういうことがあった、と話しました。彼はその労働組合の委員長に「お前には前科がつくんだよ、ずっと前科者だよ」と言われ、彼は「俺は何もしてないのに大変なことになった」と思い、怖くなったといいます。彼はなんとかならないかと思い労働組合やその関係者に話し、弁護士に相談をしました。彼は略式起訴に不服申し立てを行いました。それから正式の起訴がなされ正式裁判が始まりました。(続く)