現代日本におけるマキャベリ『君主論』の読まれ方 《人事管理の啓蒙書》または《若手行政官に対する「推薦図書」》としての『君主論』

 私はいまマキャベリの『君主論』に凝っている。今から500年以上前に書かれた「小冊子」だがとにかく面白い。crazy for. Niccolò Machiavelli -なのだ。

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 マキャベリは15世紀終期から16世紀初頭のイタリア、ルネッサンス期の政治思想家。レオナルドダヴィンチと同時代の人物だ。
 マキャベリは元々イタリアの都市フィレンツェ共和国の官吏(書記官・外交官)だったが、謀反の疑いで失脚し一年位投獄されたが釈放され、蟄居中に本書を書いた。本文書の作成意図はマキャベリが就職用に君主に献呈したものである。


 私は今回、まずマンガで『マキャベリ君主論」 まんがで読破』(イースト・プレス発行・2008年12月1日電子書籍版)をkindleで読み、君主論の背景(当時のイタリア・フランス・イスラム)の状況、概要をとらえた。
 その後『君主論』(マキァヴェッリ著・河島英昭訳・ワイド版岩波文庫)を読んだ。再読再再読中だ。
 そして『君主論・全26章⇒1冊』(君主論・出版委員会)にざっと目を通した。また日経ビジネス文庫で出ているマキァヴェッリ君主論(書き下ろし)』(河島英昭監修・造事務所編著)をよんだ。


 今回のブログでは≪この『君主論』の読まれ方≫というテーマで書いていこう。


 本文書が君主に献呈された後、印刷公刊されたが、本文書を読んだ人々はマキャヴェリ君主論』は権謀術数を君子に説き民衆を上手く支配し軍事力の増強を進めるものと解釈していた。今もそう思われ、そういう観点から相当広くこの本が読まれ利用されているようだ。
 他方でマキアヴェッリ本人は共和主義者ではないかと議論されたり(ルソー)、またヘーゲルにも取り上げられており、『君主論』は近代政治学の基本・必須の文献と考えられている。


 君主論』は現在、一般にどう読まれているのだろうか。
 日経ビジネス文庫はとても興味深い。「孫正義マイクロソフト創始者ビルゲイツのような経営者・政治家も読んでいるらしい」という。そして現代のビジネスマン・上司になる人たちががどのように君主論を読んだらいいか、何を感じ考えるべきかを教えている。功利実用本として読ませようという『日経』らしい切り口だ。『孫氏の兵法』や『君主論』は「ビジネスマン」が上司としてどの様に振る舞い仕事を円滑に進めるために必読だそうだ。「政治家」・「経営者」がビジネス上常識として持っている知識・行動様式を「ビジネスマン」も持った方がよいという(!)
 面白いのは孫正義ビルゲイツを「経営者」と呼び、財界人とか「資本家」とは呼ばない。なぜだろうか?そして経営者に対置されるのは「ビジネスマン」のあなたたち、すなわち(従業員だが上級管理職になるあなたたち)だということのようだ。あなたたちも一流の経営者のようにヒトをうまく使う術を学べということのようだ。それはそれで面白い!


    またこの本は官吏に〈国家経営の要諦〉を教える冊子でもあるようだ!¡
 人事院サイトに「若手行政官への推薦図書」というリストがある。
 この「推薦図書」のリストは、大学教授・財界人などの「有識者」や退任した「上級幹部行政官」が「若手行政官」(上級職官吏になったばかりの人から課長補佐クラス)の官吏諸君に<おすすめする>本のリストだ。


 この<おすすめ本のリスト>は人事院平成23年に公表したもので少し古くなっている気がする。だが現在(平成30年9月)でも人事院サイトの「研修」ページに載せられているから、このリストは<生きている>と思われる。

 


  『君主論』そのものと関連する本が上の若手行政官に対する「推薦図書」にあげられている。「有識者」のコメントと併せて拾っておく(但し以下の本をどの「有識者」が推薦紹介しているのかは不明だ。)

人事院 研修   「若手行政官への推薦図書」


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塩野七生マキアヴェッリ語録」(新潮文庫、1992)
著者がマキアヴェッリの思想のエッセンスを現代の日本人に提供したい という考え方でまとめたもの。語録の一つ一つは、政治行政を考える素材として極めてユニークなものであり、刺激に富むものである。リーダー、 統治、国家、人間などについて具体的に論ずる素材として優れたもの。


マキャベリ君主論
16世紀の君主国の指導者の心得をいろんな角度から書きつらねた本であるが、今日でも政治にかかわる人、特に上に立とうという人にとっては必読の書である。一国が安泰であるためには、対外的な権謀術数とともに武力を欠くことができないと言っているあたりは考えさせられる。(下線、かえる)
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こういう本を読んだ行政官が増える。どうなるか?
続きはまたのお楽しみ。(誰も楽しみにしてくれてる訳じゃないのは知ってるけどね、カエル)

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(参考)「若手行政官」に対する推薦本の中には以下のような推薦図書に関する記述がある。オモシロいのでこれもついでに収録しておく。
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養老孟司唯脳論」1989年 青土社
この本を手にしたのは、著者や本の内容に興味をもったからではない。 表紙の絵が気になったからだ。
ガウパーという解剖学者が脳をスケッチした挿絵であった。野外活動で は、スケッチが大切だ。決して、写真ではない。スケッチが情報を脳細胞 にきちんと収めてくれる。
そのことを身体で知っていたので、気になった脳のスケッチの本を読み 始めた。この本で養老さんは「国家は脳が創り上げた幻想である」ことを 淡々と説いていた。私が人生を投じた国家は、幻想であった。それは何と なく理解していた自分、しかし、その幻想から逃げられない自分、それを 自問自答するきっかけとなった本であった。(太字はかえる)
……
この文章は「退官」した「上級幹部行政官」が書いたものだろう。一体いつ頃「国家は脳(人間)が作り上げた幻想である」と気づいたのだろうか。あなたが「人生を投じた国家」は幻想である。君はマルクスヘーゲルなど学ぶ機会がなかったのだろう。「有識者」が挙げる本の目録の中にはマックス・ウェーバーの本が紹介されているがマルクスはもとよりヘーゲルさえ紹介する人はいない。(吉本隆明が入っているのは興味深いが。)
国家という考え方が生まれたのは今から3000年以上前のことだろう。旧約聖書の中で宗教が「産まれ」たころ「国家」という観念も生まれている。民衆自身、自らを守るという要求もあり、部族社会から王国が建設され国家が建設される。当然この考え方は下部構造の中から産まれる訳だが単純化すべきでなく、人間の頭(頭脳)を通して(介して)生まれるもので、幻想(イデオロギー)と云えよう。

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(注)<千回のあなた>様、おめでとうございます。(笑)。君主論はもと献呈論文ですが、本駄文メモはあなた様の千回記念に献呈すべく書きました。今まで激励されてきたお礼の(つもり)です。自己顕示的でないつもりですがうまく伝わることを願っています。先生すなわちD氏は現代社会がどうなっているか充分すぎるくらいご存知なのは知っております。ですからこのメモから新しい知見を得ることはないと思います。しかしわたくしの力量からは現時点ではこの程度のものしか書けませんのでご容赦ください。また『アイヌ民族団体を地方公共団体(憲法92条)と捉えアイヌ民族団体が漁業権(憲法29条2項)の許認可権(憲法94条)の行使ができる』という趣旨の拙論はT先生退職(古希または喜寿あるいは追悼)記念論集が出版されるとき投稿させていただければ光栄です(笑)。こちとら、本物の市民(ぷー太郎)研究者(?主観)ですからダメでしょうか。それが何時になるか分かりませんがそれまでに力をつけて落研に負けないようにいたします(そのつもりです)。相変わらずほぼ図書館本でやっとります。『敗戦』はそちらからAmazon経由で購入しましたが、自分のcardなしですよ。でも何とかやっとります、手はありますので(笑)、ハイ。ありゃ突っ込まれるかも、と思いましたが、やっぱり突っ込んできたよ、嫌だね。私みたいな雑魚の話よく覚えてくれてますね(笑)。ありがとうございます。あるがん患者の個人情報請求という拙文中のmさんからあの時は本当に懇切ご親切なお手紙頂きありがとうございましたというメッセージを預かりました。心からお礼申し上げます。どうも性格がねじ曲がっているので悪態ばかりで済みませんということでした。it's me というお話です。末尾ながら今後ともお元気でご研究をお続けになられることを心からお祈りし、献呈の言葉に代えさせて頂きます。

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(注)日本では一般に「マキャベリ」と表記されるが「マキァヴェッリ」というのがイタリア語の音に近いようなので私も以下「マキァヴェッリ」と併記する。


(注)岩波文庫岩波文庫ワイド版も同じ)『君主論』の河島英昭の訳と注釈は非常に優れた翻訳・注釈であると筆者は考える。


 まず河島訳は原文に忠実である。マキァヴェッリの自筆原稿は発見されていない。しかし現在最も自筆原稿に近いと考えられている文章に従い、かつ原文の論理・思想が正確に追える様に厳密に翻訳されていると思われる。河島は解説でこう述べている。「読者にはぎこちないと思われる(翻訳)個所があるかもしれない。が、私の訳文はほぼマキアヴェッリの書いたとおりである。接続詞、副詞、代名詞の一つたりとも、省略しないように努めた。}(p386)


 他方本文が198頁であるのに対し、160頁にわたる詳細な「注釈」置かれている。河島は「要約・中性・客観の名を装うような注は、極力取り除くよう努め」「個性的で優れた(世界のマキアヴェッリ研究の)記述を選び」「この一世紀の君主論研究批評史の大筋を示」そうとした。従ってこの「注釈」自体がマキアヴェッリの本文とは一体であるが別個の、一つの物語・思想を構成していると思われる。


 すなわち河島英昭の岩波版は君主論の正確な翻訳を提供し社会科学の発展に尽くし、他面で1998年5月段階の世界のマキアヴェッリ研究の知を示そうと懸命な努力をしていると云える。原文の客観性を担保しマキアヴェッリの思想・近代政治学の基礎研究の内在的論理を明らかにし同時に到達点を示そうとしていると云える。


 河島英昭は「解説」の最後の部分にこう記している。
 「ちょうど五百年前の五月に、フィレンツェ共和政体の書記官になったマキアヴェッリは、誰よりも深く≪イタリア≫を思い、かつ憂いつつ、屈曲した文体を生み出した」「どうか、読者は、忍耐強く思慮深い君主のごとくに、この『小冊子』を読み解いて頂きたい。」と述べ、本翻訳が将来の研究者と一人ひとり人々の幸福につながることを期待している(この注の下線部分、全部筆者)。


 それ故わたくしは河島英昭の本書は高い価値を持っていると考えている。


(注)マンガでマキャヴェリ君主論』はまんざらではないと思う。分かりやすいしイタリア史(部分的だが)の入門には悪くない。とても好感が持てる。
 あるマキャヴェリの研究者は以下のように評価をしている。
「タイトルからは、『君主論』をまんがで読破するような印象をうけるが、内容の大半は、マキァヴェッリの生涯を描いたもの。ところどころでギャグ漫画のようなコミカルな場面があるのは楽しい。ただ『君主論』は、オリジナルが平明な文章なので、著作(翻訳)そのものを読みましょう。もちろんこの漫画も、マキァヴェッリ理解の補助・ガイドにはなる。」マキャベリ の参考書/入門書


 この研究者(鹿子生浩輝)は現東北大学教授。九州女子大兼任講師時代に『自由と征服』という著書論文を出版。HPを見るとマキァヴェッリ関連「入門書」の著書に対して辛口の短評・紹介を書かれているが、本書についてはそれほど辛口でないように思われる。鹿子生浩輝のウェブページ


(注)この本のリストの中には『官僚法学』お勧め御用達の本が多い。(『「官僚法学」入門』というのはかつて長谷川正安が民主主義法学に対立する概念として『法学入門』(合同出版)の中で云っている)。例えば団藤重光・東大教授・刑法、小野極悪刑法の弟子だが小野ファシズム刑法の「反省」に立ち罪刑法定主義の強調や形式的解釈の優位性などを唱え我々の側からも相当の功績があると評価してもよいと私は考える。『法学入門』、最高裁判事、死刑反対論、宮内庁特別顧問)


(注)私の元々の問題関心は政体あるいは社会構成体がどう移行してきたか、またはこれをどう移行させるか、という点にある。(「どこからどこへ」の問題)。
その過程で一定の勢力が「軍事的制圧・抑圧」「独裁」を行うプロセスをたどるのは已む無しか。(「だれがだれを」の問題)。


 これは当然『国家と革命』(レーニン)の問題だし、『マキャヴェリの孤独』(アルチュセール・藤井和美訳 藤原書店)の問題意識だし『現代の君主』(グラムシ)の考えてきたところだ。特定の政体内(社会構成体内部)での政権交代を問題にするつもりはない。出来たらこれらの課題まで辿り着きたい。

 


 アルチュセールの『マキャヴェリの孤独』に考えさせられるのは、マキアヴェッリが「孤独」だったのか、今も孤独なのかということだ。孤独とはなにかな。
現在の時点から見れば、当時(ルネサンス期)は国民国家の形成時期で二つの意味の主権が登場し始めた時期だろう。主権は恐ろしい概念だ。たとえば先住民族を後進のものとある扱い奴隷化することを「合法」とする。ただの事実上の話でなく(合法)とする。その点に誰も気づいてないのか?


 『歴史の終わり』と云われた今頃なんだろう。こんなもん読んじゃて。遅れてきた老人だね(笑い)。
「<歴史>が終わった」から<考える>のが面白い、蓋し理屈でなく現実は諸階級諸階層勢力のたたかい生活でありこのたたかい生活のいまを認識し変革することこそが私が生きていて面白い。「考える」ことが私にとっての闘争(の一部)だからだ。笑い。お彼岸だからこれくらい言っても釈迦には怒られまい、舌を抜かれることもあるまい。まあ本来仏教仏道とお彼岸は関係ないけどね、浄土真宗親鸞を見よ、笑い¡ ❗️。

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【参考】

人事院 研修

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